Friday 21 September 2007

オーストラリアにおける断尾禁止法とコーギーのボブテイル遺伝子

2003年より、オーストラリアでは断尾が法律で禁止されている。怪我による断尾は認められているが、それ以外はダメとのこと。

どうやら断尾反対派がロビー活動を行って政治家を動かしたらしいが、皆が皆この法律に満足しているわけではない。いまだにこのトピックに関しては掲示板等で大きな議論となる事が多い。

その中で先日、尻尾のついたコーギーのオーナーが獣医に犬を連れて行ったら、尻尾の骨が何らかの理由で折れていたらしく、知らない内に治っていたという。今まで彼女は断尾断固反対派だったらしいが、そのことがあって、もしかしたら尻尾がなければ、と思うようになったらしい。案の定、議論は白熱して、「そんなの尻尾を生まれてすぐに切ったからって、将来怪我をするとは限らない!」といった卵が先か鶏が先かのような方向に行ったのだが、一つ興味のあるビデオのサイトが掲載されていた。

断尾禁止法が施行されてから、私が住んでいるNSW州の犬協会のトップが断尾方法によっては全く子犬に痛みを感じさせずに尻尾を短くすることができるという事を政治家達に訴える文章を公表していたが、それに関連している。それまでは文章だけでいまいちピンと来なかったのだが、上述のビデオを観て納得がいった。

これはイギリスの団体が作成したビデオだが、ボクサー犬の生まれたばかりの子犬たちを、母犬にも子犬にもストレスを与えないで、子犬の尻尾に輪ゴムをつけて行っている。あくまでこれは獣医やトレーニングを受けた人でないとやってはいけないと断ってはいるが、見ている限り全然問題ないように思える。輪ゴムがくくりつけられた所は血流が止まるので、数日後にはポロッと落ちるという手順らしい。

そのサイトはこちら(英語)。

英語が分からない方のために下に直接ウィンドウズメディアプレイヤーが再生されるサイト(低解像度・高解像度)を貼り付けておく。
Low resolution tail docking video
Higher resolution tail docking video

また、以前色々断尾について調べたのだが、ヨーロッパではボクサー犬の尻尾を短くするために、ボブテイル遺伝子を有するコーギーを交配する試みもなされているらしい。

そう、ボブテイル遺伝子を有するコーギーは長さはまちまちらしいが短い尻尾もしくは無尾で生まれてくる。興味深いことに、この遺伝子は優勢遺伝なのだが、以下のルールがあるらしい。

Tをボブテイル遺伝子とする(学生の頃生物の時間で習ったメンデルの法則を思い出して欲しい)。性別による影響はないものとする。

パターン1
Tt と tt を掛け合わせると組み合わせは Tt と tt。

パターン2
Tt と Tt を掛け合わせると組み合わせは TT, Tt, tt。

結果
ttはボブテイル遺伝子がないので尻尾コーギーが生まれる。
Ttはボブテイル遺伝子があるので無尾もしくは短尾コーギーが生まれる。
それではTTだと…?

ボブテイル遺伝子を両方有すると致死性の作用が起き、受精時にその受精卵は死んでしまうか死産となるらしい。つまりTTを有するコーギーはこの世に生を受けない事になる。

オーストラリアで断尾法が施行されてから、コーギーのブリーダーの中にはこの遺伝子に着目し、海外からボブテイル遺伝子を有するコーギーの精子を輸入したりしてボブテイルコーギーを繁殖しようとする者もいれば、キツネみたいなふさふさが可愛い、と言って尻尾コーギーだけを繁殖し、ボブテイルが欲しいと何も知らずに問い合わせてくる人に対しガウガウ噛み付いてくるブリーダーもいる。

尻尾コーギーと無尾・短尾コーギー、好みは人それぞれだろう。でもこうやって選択肢があるのなら、犬に負担をかけずに行う方法があるのなら、それもありでいいじゃない?って思う。

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